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生地のハナシ14 ~ ダウン & ウェザークロス ~2009.10.29

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧の皆様、こんにちは。 前回より少し間をあけて

しまいましたので、今回はちょっと長めに 語らせて頂こうと思います。

昨年 衣で初登場を果たした“ダウン”。 お初では 袖なしのベストとして登場し、

言うまでもなく 衣スタッフも こよなく愛する1着になりました。

そもそも“ダウン”とは、水鳥の胸部に生える 小さな元羽軸(もとうじく)と、
その先から延びる羽枝(うし)からできている綿毛のこと。
さらに この羽枝の数が多く 産毛が残り、タンポポの綿毛のような 形をしたものが

ダウンボールと呼ばれるそうです。

ダウンボールは柔軟性があり軽量で、多くの空気を含み 保温性に優れているので、

寝袋などの保温性が必要とされる物の中綿として、

得に寒冷地で活動する人々に愛用されていました。

そんなダウンが今年の衣には ジャケットとして登場!
軽いダウンを包んでいる素材は『ウェザークロス』と呼ばれる物。
ウェザーは「天候」という意味ですが、なぜ そんな名前が与えられたのでしょう・・・?

それは まだ、この世の中に防水機能というものが 生まれる前のお話。

衣類の素材が 主に綿であった頃、その吸水性のある綿で
いかに雨露から体温を奪われる事を防ごうかと考えた人々が、
組織を とても高密度に織り上げ、水分が しみこみにくい様にした事によりPhoto
あらゆる環境に適した素材が生まれました。
後に『全天候型』とも呼ばれた事が、この素材の始まり。

そんな生地に 衣 こだわりの染め“玉虫染め”を施し、
今回のダウンジャケットは 本当に 特別な色合いになっています。

実際に見てみると、その色に 吸い寄せられるように見入ってしまい、
着てみると 体を 優しく覆ってくれている感覚を覚えます。
ぜひ一度は その感覚を体感してもらいたい。そんな1着が出来上がりました!!

それでは、次回は その魅力に やみつきになってしまう
“玉虫染め”のハナシをさせて頂きます。お楽しみに!!

※衣各店には このダウンジャケットが入荷しています。

  話の続きが 気になる方は、ぜひお店にいらして下さい。語らせて頂きます。

  オンラインショップにも、近日登場予定です! 楽しみにしていてください!!

生地のハナシ13 ~刺し子織~2009.09.18

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧の皆様、こんにちは。
今回は“刺し子織”。 織?と気になられた方も おられるかも知れませんね。

“刺し子”といえば…、お馴染み 手作業で1針1針糸 を刺し 模様を作り出す『手刺し子』。 古い藍布を何枚も重ね、補強の為に縫い合わせた物、『津軽のこぎん刺し』『南部菱刺し』等が代表的です。Photo

“刺し子織”とは、経糸(タテイト)と横糸の交差の中に、太い刺し子糸をあわせて その模様を表現した物。 経糸に太い刺子糸を加えたものを「たて刺」(たて二重織)、緯糸に太糸を加えたものを「よこ刺」(よこ二重織)と言うそうです。

補強・保温・装飾 とその目的は幅広く、今でも打ち込みの強い“刺し子織”ができる織機は少なく、大変 貴重な素材なのです。

糸の凸凹がしっかりと出ている為、藍染めの場合 着込んだ時の凸部分に“あたり”がつきやすく、顔料により染めた場合、凹の深い所に染料がたまり、その部分の色は濃くなり 表情を作り出すのです。

そんな“刺し子織”素材の 衣 謹製の1作品。表情のおもしろさを、ぜひ その目でじっと見つめてやってください。見るほど、着るほどに やみつきになりそうな素材です。

『刺し子』については 別のおもしろいハナシがありますので、また別の機会に お話しさせて頂きますね。

生地のハナシ12 ~カノコ~2009.04.15

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧の皆さま、
こんにちは。
今回のおハナシは “鹿の子(かのこ)”。

鹿(しか)の子供にある 背の白い斑点に似た模様のP1430831 編み方の総称を

そう呼ぶそうです。春から夏にかけて よく着られるポロシャツ。
そのアイテムに使われる 代表的な素材が“鹿の子”。

表面が凸凹になっているため、糸の盛り上がりによって得られる

サラリとした肌触りや、特徴的な網目による 風通しの良さが特徴なのです。

ポロシャツというものは、もともとは イギリスのポロ(馬に乗って行う)競技の

ユニフォームが 原型で、その後テニスや、ゴルフのウェアに用いられ、
歴史を重ね 今の様な お洒落アイテムとなったのだとか。

この春、衣にも “鹿の子”素材の ポロシャツが お目見えします。
少しだけ、この素材のことを知ってもらい 着てもらえれば と思います。

生地のハナシ11 ~リサイクルコットン~2009.03.04

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧のみなさま、こんにちは。
今回は「リサイクルコットン」についてのお話です。

衣でも度々登場する素材で、
本当に“衣らしさ”を表現するのにふさわしい素材ではないでしょうか。

そもそも綿の繊維は同じ種類、同じ産地であっても 一本一本少しづつ長さが違います。
その長さの異なる物同士をムラのないきれいな糸に紡ぐ時、
どうしても出てくるはみだし者。

これらは<落ち綿>とか、<クズ綿>と呼ばれるのですが、
こんなはみだし者達をもう一度集め、ひとつにまとめ、
紡がれた物が「リサイクルコットン」と呼ばれるものになります。

1本1本の繊維が短く、紡績するのが大変で手間がかかる為、
普通は焼却されてしまうのだとか…。P1370542

<生成り>色に見られるポツポツと黒い点は、綿カスの名残。
古寺の昔から使われ続ける“襖(ふすま)”の様な顔に
“衣”は魅せられ、漂白することなくわざと残しています。

とても素朴な表情としなやかさは、この素材固有の物。
衣では今までも取り組んできた様に、
これからも使い続けられる素材となるでしょう。

生地のハナシ10 ~プレーティング~2009.02.25

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧の皆様、こんにちは。
今回は「プレーティング」について綴らせて頂きます。

天竺(Tシャツ生地)や裏毛と同じ“編み物”の仲間で、通常1本だけ通す針に、

2本の糸を同時に引き入れながら編んだ生地を 「プレーティング」と呼びます。

“二重臼(にじゅううす)”とか、“添え糸編み”“くるみ編み”とも呼ばれるそうです。

上質な生地感と、しっとり馴染むような着心地が特徴で、
この春、衣が使うプレーティングにはもう一つ!最大の特徴があるのです!!

それは何かと言いますと…、“色”。01kd01g2_l_3

同時に引き込む2本の糸を全く別の色にしておく事で、
一枚の生地の表裏が、全く別の色に仕上がるのです。

これはプレーティングが<表側に出る糸>と、<裏側に出る糸>とを、
きれいに分かれさせる事ができる編み方だから生まれた表現。01kd01g_l_3

さらに、ふわっと柔らかく編んでいるので、

糸と糸の隙間から反対側の色が少し見え隠れ。
-廓(くるわ)-をイメージさせる色合いに仕上がりました。

生地のハナシ9 ~硫化染【りゅうかぞめ】~2009.02.06

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧のみなさま、
こんにちは。
今回は「硫化染」について語らせて頂きたいと思います。

 “生地”のハナシなのに“染め”!? 01jk01g2_1
と思われる方もおられるかも知れませんが、
“染め”も生地にとっての大切な要素のひとつです。
 同じ生地でも色によりその表情は違い、
それが個性につながるのです。

 そもそも藍染は染液から出したあと、01pt04f2_1
空気に触れる事で発色するのですが、
染色に時間がかかり、色落ちが強いという
人からは嫌われがちな一面を持っています。

 それを改善しようと生み出された“染め”が
「硫化染」なのです。02jk01ag_1

 代表的な物に“消防袢纏(はんてん)”等があります。
藍染が“濃紺”から“淡い水色”に冴えていくように、
消防袢纏の、炭の様な漆黒も、
燃えた後に残るはかない灰の色の様に
時間と共に元色とその淡色が共生した色へと姿を変えます。
きっと育てる楽しみを持つ一着になるでしょう。

生地のハナシ8 ~重ね~2009.01.22

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧のみなさま、
こんにちは。
久しぶりに生地にまつわるお話を綴らせて頂きたいと思います。
今回のテーマ・・・それは生地の「重ね」です。

 
日本において「重ね」は古くから、
その時代や地域・文化にあわせ、私たちが着る衣服の中に取り入れられてきました。
例えば、着物。P1360549
色と色が、重なりあいながらもお互いを引き立たせ、
息をのむ美しさを見せる、奥深き伝統衣装です。
それは、狂おしい程鮮やかに、時になまめかしく。
・・・美しさの奥に潜んだ艶っぽさは、
今の時代に生きる私達をも魅了します。

そして、時は流れ 現代。
そんな「かさね」にまつわる生地が使われた長袖シャツ商品が、今春お目見えします。
それは、【オーガンジー】と【ボイル】と呼ばれる薄い2種の生地をP1360511
重ねて作られたシャツ。

透き通ったシャリ感のある生地に、様々な色を落とし込み、
それはそれは溶けるような軽やかさと妖艶さを表現致しました。
(この生地がオーガンジーと呼ばれる素材です。)
そして、その背景には無地のボイル生地。
こちらも肌ざわり抜群の薄手のシャツ生地です。

今期の衣のテーマと併せて是非お楽しみに していて下さい!

・・・2009年春夏テーマは≪郭-くるわ-≫・・・
そこからメージさせる柄、色、形、そして生地。
そんな中で、妖艶な着物を羽織り内側に秘める“色”を魅せる。
上記のシャツに、雰囲気がぴったり!
その他にも、鮮やかさと艶やかさが詰まった商品達が続々登場予定です。
是非是非お楽しみに!

生地のハナシ7 ~古布~2008.11.27

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧のみなさま
こんにちは。
今回も生地にまつわるお話しを綴らせて頂きたいと思います。

今回お届けする話題、それは・・・「古布」。
読んで字の如く、古い布、古い生地の事です。
けれど、一言で「古布」と言っても、その種類は様々。
華やかな着物生地も、(夏のアロハが代表格です!)

鮮やかな青を表現する藍生地も、(部分使いや、ハンチング・
半天などの柄物はジャケットやコートに・・・。)
鯉のぼりや、前掛け(バッグなど小物から、ジーンズやジャケットの
リメイクパーツとして・・。)だって、古布の種類にあたるのかもしれません。

様々な種類と共に、その生地が生きてきた時代や地方、
使われてきた意図も、様々。
上に述べた藍の生地一つとっても、お布団用や簡衣類など
普段から身の回りにあったであろう藍生地から、
屋号やお揃いのマークが入った、気分も引き締まる半纏などの仕事着。
筒描きの生地には、用途よりも柄で楽しむ心意気も充分伺えます。

そんな「古布」という生地達が、衣の洋服に力を貸してくれるもの、
それは・・・柄や色・形など先人たちが残した文化という軌跡と、
物を大切に扱うという優しい気持ち。

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何年前、何十年前の生地から漂う目に見えない気配は、
様々な人の手に渡り、それでもここまで辿り着いた
“時間”を紡いだ奇跡の証拠。 時代の重みでもあります。

そんなご縁が、衣の洋服に舞い降りたのが「古布」生地を使った商品なのです。
これから先・・・時代は流れ、文化は変わり、私たちの面影だって
なくなってしまう頃が来た時、今目の前にあるこの「古布」達が、
更に尊い存在になっていますように。
そして、願わくば衣の洋服たちも 後人たちにとっての「古布」になりますように。

生地のハナシ6 ~ふわふわ裏毛~2008.11.05

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧のみなさま
こんにちは。
今回も生地にまつわるお話しを綴らせて頂きたいと思います。

・・・今回は、ひとつの商品にスポットをあててみたいと思います。
その商品とは・・・「ふわふわ裏毛ショールプルオーバー」。

“ふわふわ”という響きからも、その生地が持つ柔らかさや
優しさが伝わってくると思います。
 和歌山県にある編み工場で編まれたこの生地。
糸と糸との間に含まれた空気は ふんわりと生地を構成し、
優しい肌触りを作ってくれました。
何年経っても、何十年経っても、その温もりは生地と共に。
是非、たくさん着込んで頂きたい一品です。

そして、生地に隠された秘密がもうひとつ。6_2_2
一見、無地のインディゴ生地に見えるのですが、
実は・・・二色の“青”が、この生地には隠れているのです。
使われたのは、微妙にトーンの違う二本のインディゴの糸。
時が経ち、それぞれが色を落としていった頃、
また違う見え方をこの生地はさせてくれる事でしょう・・。

それは・・・たいせつに、永い時間を過ごして頂いた方に捧げる、
インディゴ生地からの小さな小さな贈り物。
ストライプの様に、濃淡のついた二色の青が顔を出すのを
静かに待っています。

 やわらかく着込んで育った生地と、表情を変える生地。
二つの楽しみを詰め込んだ、「ふわふわ裏毛」のご提案です!
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生地のハナシ5 ~別珍~2008.10.28

かわら版 -生地のハナシ-

気まぐれ日記をご覧のみなさま
こんにちは。
今回も生地にまつわるお話しを綴らせて頂きたいと思います。

今回のテーマは「別珍」。
この言葉を聞いて、まず浮かぶのは・・そうスカジャンですよね。
言葉の意味は解らずとも、手で覚えてきたこの感覚。
秋が過ぎ、冬を迎える前に 妙に懐かしく思えるこの手触り。
きっと、皆様も ジャケットや帽子など、一着は身の回りに
この「別珍」が潜んでいることでしょう。

ところで、この「別珍」、何の糸で出来ているかご存知ですか?
以外?!かもしれませんが、“綿”なんです。
この光沢が、この滑らかさが、そうは思わせないのですが、
紛れもなく・・綿。
綿のパイル織物(タオルの様に細かい糸がループになっているもの。
+そのループを切断して毛羽をつくったもの。)の一種です。
本当に、様々な顔を持っているのですね。綿は。

肉厚なので、着ていてもとても暖かく、手触りも滑らか。
色味の深さも特徴です。見る角度により、色に奥行きが出てきますよね。
光沢感が、高級感も与えます。
こんな理由で、「スカジャン」という特異な文化は、
この「別珍」の上に これまで息づいてきたのかもしれません。
そして、おそらくこれからも・・・。

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