-もの作りのハナシ-『西陣織』2011.04.02
気まぐれ日記をご覧のみなさまこんにちは。
本日より開催される「2011年春夏展示会」でお目見えする白いシャツに、ある飾りステッチを施しています。 今回はそのステッチに使っている糸についてお話させて頂きます。
みなさんは京都の織物の代表、 “西陣織”というものをご存知でしょうか。 主に帯などが西陣織として目にされることが多いかもしれません。
先日、京都にある西陣織物会館へ行き、実際に職人さんが織っている作品を見せて頂きました。 その時織っておられたのは、あの俵屋宗達の「風神雷神」。 約4m×2mという大きさの“織物”です。 西陣織の中でも代表的な「綴れ(つづれ)」という、経糸(たていと)を見せず緯糸(よこいと)で模様を表現する技法で織られていました。
使う糸はもちろん絹。
題材が“絵”のため表現される微妙なグラデーションと、さらに17世紀前半頃のものといわれているその弊風画の古めかしい色を再現するため、色を作るのに大変な技術と時間を要するそうです。
織りに使われる1色の糸を作るにも、もともと染められている糸では色があわないため、わざわざ撚りをほどいて異なる色をあわせ撚り直し、目指す色を作り出すそうです。 例えば一言で「金糸」といっても、あわせて撚る糸色や本数によって何十色もの金糸ができ、織ったときにどのように見えるか、確認のためには“一度織って色を見る”という職人。
今回の織物で使うその色数300色!
金の箔が鮮やかに残っている部分、少し色がはがれている部分、雷神の体の微妙な濃淡など…、長年培った感性で色を作り出すのです。
なんとこの「風神雷神」を完成させるのには、この熟練の職人でも2人がかりで4年かかるそうです。 繊細で表情豊かな織物は、西陣織に携わり、60年にもなるこの職人さんの手が作り出す極上の芸術作品。 自身のセンスと技術をもとに作り出すこの織物が形になった時、生きがいを感じると話しておられました。
「若い方は知らないでしょう」。 この言葉を何度も言われたこの日、その言葉の多くが日本の最もすばらしい美意識であり、芸術作品であり温かいものでした。
ささやかですが、素晴らしい伝統技術を守り、継承してきた職人さんの「手」が作った糸を、ぜひ感じてみてください。
『奄美の人・自然に衣ができる事』2010.10.23
皆様、こんにちは。
ここ数日、テレビや新聞で報道されている奄美大島での記録的な豪雨…。 これによりライフラインも寸断され、避難を余儀なくされている島民の方が数多くおられるという情報は、耳にされた方も多いかと思います。 復旧作業もいまだメドが立っていないとの事。
10月23日時点でも24時間での予想雨量が100㎜を超える地域もあると報じられています。 実際に経験のある方でないと、その脅威は計り知れませんが、現に私たち衣の作品づくりに助力いただいている“泥染め”の伝統工芸士の方とも、週末にようやく連絡が取れたという状況です。 報道から得た情報では「土砂が泥田に流入すれば、当分泥は使えなくなる。」 つまり、“泥染め”が行えないという事になります。
自然災害だからとはいえ、職人にとって これほどつらいことはないのではないか? 奄美諸島の人達に何かできることはないか? と悩み、私たちにできる事を考えました。 そして行き着いた答えとして、今回 “泥プリント”にて作り上げたロンTを販売させて頂き、その売り上げの一部を復興支援に寄付させていただく事にいたしました。
性質は異なるものの、“泥”で作り上げてくれた衣作品の、せめてもの恩と思いを込め “泥プリント”。 本当に、微々たる力ではありますが、少しでも役に立てれば…と、思います。
衣各店にて、10月24日より販売を開始いたします。 寄付させていただきました際には、あらためて“衣かわら版”にてご報告させていただきます。 ※オンラインショップでは10月23日より、販売を始めさせていただきます。
写真は、私たちが研修で訪れた際の奄美大島の雄大な姿です。
私たちだけでは大きな事は何一つできませんが、皆様のご理解とご協力によって、少しでも早く島の復興につながれば嬉しく思います。
もの作りのハナシ -泥染め-2010.09.24
伝統工芸『大島紬』の泥染め
日本の南国、その土地の人の暖かさで育まれた泥染め
奄美の方言で「テーチ木」と呼ばれる木のから取り出した“自然の色”と、
腰ほどまで つかる「泥田(どろた)」の持つ“大地の色”が結びついて現れる色。
最初は茶褐色の泥が 次第に独特の茶に生まれ変わっていく…、衣の大好きな“藍”にも通じる、
その“育てる”という過程に魅かれ、衣 スタッフみんなで、この泥染めをおこなってきました!
秋の少し肌寒くなった時、人の温もりが感じられる服をお届けしたい。
そんな事を思いながら、夏の日差しを浴び、1着1着を手染めしたもの。
理屈ぬきで、スタッフが子供の様に泥遊びしている様で、本当に楽しく染めさせていただきました。
仕上げは もちろん伝統工芸士によって、深い色に染め上げられています。
今回の体験の中で1つ、少しステキな話が聞けました。 テーチ木と泥田の持つ濃い鉄分が反応をして、この色を作りだすそうなのですが、
この泥田で何度も何度も染めを行うと、少しずつその鉄分は減っていきます。
科学的なものを一切使わず染め上げる泥染めは、減った鉄分を補うために、
田んぼのまわりに植えられているソテツの葉を切って一晩つけておくそうです。
そうすると、朝にはもとの鉄分を含んだ泥田になっているのだとか。
ソテツとは“蘇鉄”と書きます。鉄を蘇らせる魔法の植物、神様からもらった素敵な名前。
そんな話に感動した 今回の泥染め研修で作り上げた 衣 作品が、全店に登場します。
店舗によってご用意しているアイテムは異なりますが、これからもジーンズやハンチングなど、
色んな“泥染め”作品が登場します。 どうぞ、お楽しみに!!
衣 ヴィンテージ “武骨ジーンズ” ― 始まり ―2010.08.05
もの作りのハナシ9 -水彩捺染-2010.02.19
気まぐれ日記をご覧の皆様、こんにちは。
今回は『水彩捺染』についてのオハナシです。
少し、小・中学校の美術の時間に教えてもらった事を、
思い出しながら読んでもらえると わかりやすいかも知れません。
“絵の具”といっても、たくさんの種類があり、描きたい絵のイメージで
使う絵の具を使い分ける。 まるで画家のような考え方なのですが、
まさにそんな “もの作り” に 今回は注目してみます。
“水彩”と一口に言ってしまいますが、この“水彩”にも
<透明水彩> と <不透明水彩> という種類が分かれていましたよね。
今回、こだわった技法は 《透明水彩》 。
何より特徴的なの事といえば、その名の通り“透明性”。
どんなものに絵の具を塗っても、その絵の具の固有の色が
そのまま発色する “不透明水彩” は、どんな色の上からも 新しい色を
ところが“透明水彩絵”は、絵の具の層をすかし
土台にある地の色が透けて見える性質があり、まさに“透明”。
先に塗った色に別の色を重ねると、
新しい色の層から前の色の層が透けて見えるようになります。
この二つの色が混ざり合い、その中間の色が現れてきます。
他の絵の具にない、水彩絵の具独特の性質です。
だからこそ、色の重なり部分が限りなく柔らかく、
光との関係が 色濃く現れる表情が生まれるのです。
また、一度 色を重ね濃く表現された部分には
明るい色を重ねても、決して明るい色には定着しません。
色の塗り方の順序一つでも表情を変える、おもしろみのある染料。
そんな『水彩捺染』、衣 の新たな こだわり技法の仲間入りです。
※『水彩捺染』の技法が使われている作品がこちら。 「水彩牡丹ロンT」
ケータイの方は、こちらから。 「水彩牡丹ロンT」
もの作りのハナシ8 -高蔵染め-2010.02.12
気まぐれ日記を ご覧のみなさま、こんにちは。
今回は、『高蔵染め』のオハナシをさせて頂きます。
これまで“染め”のオハナシでは、染色の技法や・性質の事でしたが、
この『高蔵染め』とは ある染色作家の作品にのみ 付けられる名前。
京都は北端の地、丹後という地域。
この地方には 約290年前、京都西陣から持ち込まれた技術から
創り上げられた「ちりめん」が伝統産業の一つとして存在します。
“高蔵染め”の作家も、その「ちりめん」に深く関わる家に生まれ、
ごくごく自然に その世界に足を踏み入れたそうなのですが、
『真白な反物は “染め”により、新しい命が吹き込まれる』
と語るほど『色』の魅力にひかれ 次第に没頭する日々を送り、
この世に ふたつとない色を求める 手染め作家です。
また、丹後地方の気候は 雪の多い地であり、秋から冬にかけて
「うらにし」と呼ばれる季節風が吹き、「弁当忘れても傘忘れるな」と
言われるほど 雨の降ったり止んだりする日が続きます。
その気候が 良質の水、適度な湿度をもたらし、
“染め”には欠かせない大切な要素を満たしてくれる地なのです。
そんな作家が、その地で 染めてくれた 衣 の“色”。
それが『 衣 の高蔵染め』。
手染めだからこその むら感、色と色の境界にできる 新しい色。
どうぞ、お楽しみ下さい。
もの作りのハナシ7 -玉虫染め-2009.11.04
気まぐれ日記をご覧の皆様、こんにちは。
今回のおハナシは“玉虫染め”。
「玉虫」ってご存知でしょうか? そう、昆虫のタマムシです。
全体に深い緑色で、虹のような赤と緑の縦じまが入る あのタマムシです。
その とても美しい鞘翅(さやばね)が持つ、独特の色の見え方。
通常1度で十分な染色工程を 手間をかけ2度行う事で、
そのタマムシの羽の様に 奥深い雰囲気を表現できるので、
衣では“玉虫染め”と呼んでいます。
いつからか この“玉虫染め”は、衣 独特の色表現をする技法として
すっかり定着した 特別な技法。
どのようにも解釈ができて はっきりとしない ものの例えが
「玉虫色」と言われるように、本当に言葉では表現しきれない。
そんな色を、納得のいく色になるまで何度も試染めを行い、
ようやく出来上がる 唯一の色。
タマムシの羽は、その命が尽きても いつまでも朽ちる事はなく、
子供ながらに その色を綺麗だと感じた頃の記憶から、
この色に惹かれ 追求し続けているのかも知れません。
この秋冬は特に この“玉虫染め”作品が多く登場しています。
すでに お持ちの1着も そうかも知れませんね。
気になられた作品は、どうぞ お尋ねくださいませ。
それでは次回は、色を作り出す事すら難しい この染めを、
手捺染で作り出した ダウジャケットに使われている素材が
出来上がるまでの秘話を おハナシしたいと思います。
もの作りのハナシ6 -天然染め-2009.10.08
気まぐれ日記をご覧の皆様、こんにちは。
もの作りのハナシも ようやく6回目。
今回は 衣の“天然染め”について お話させて頂きます。
衣では 季節ごとにテーマを決め もの作りをしており、
そんなシーズンごとに変わる 柄・デザイン・色 ですが、
ずっと変わらずこだわり続けてきている事があります。
もちろん染料は自然から得られる物ばかり。
人工で作られた物でなければ 何でも染料になるそうです。
ただ この天然という物は くせもので、
思う色を出す事が なかなか出来ない上に、
その定着性も決して強くはありません。
染料の材料を集めるだけでも、やっとの思い。
そんな一癖も 二癖もある天然染めだからこそ、作り出された色は
淡い色でも奥深く、濃い色にも 独特の重みが生まれます。
今は科学が進歩し、どんな色でも作る事が出来る時代。
でも、天然染めされた作品が放つ色は、
化学染料では 決して再現できない、特別な色だと思います。
せっかく自然からもらう色だから、その温もりをそのままに表現したい。
ただ、それだけの思いで 天然染めを続けています。
これからも 少しずつですが “衣の天然染め”を出し続けたいと思います。
どんな色が出てくるか、楽しみにしていて下さいね。
※新作天然染め作品を ご覧いただけます。
「天然染め 河童の雨宿りロンT」 PCからはこちらより
もの作りのハナシ6 -手描き友禅作家 奈々緒-2009.07.22
京友禅の技法の一つ「手描き」。
作家が その手を 自在に操り、 一筆一筆 丁寧に描きあげる。
そこには、その瞬間でしか 出せない色が現れる。
時には鮮やかに…、時には重みのある色に…。
こうした熟練の腕を持つ作家の数は 年々減り続けています。
そんな作家が えがく作品を、
衣では オリジナルTシャツやジーンズといったアイテムに
そのキャンバスを変え、長きに渡り 提案し続けています。
人の手が作り出す 作品の為、数をたくさん作れるものでは
ありませんが、本当の本物に触れていただける機会を。
と思い、わずかではありますが 置かせていただいています。
オンラインショップに登場中の作品にも、
この作家の内の1人によって描かれた作品がございます。
ろうけつ染めの技法の上に描かれた「鯉」と「虎」、
“奈々緒”という作家の作品です。
染料を中心に 色や柄を作り上げる京友禅の世界の中で、
染め上げた着物に日本画家の様に顔料を用い 絵付けをする作家。
女性ならではの感性でモチーフをとらえ、繊細な表現を得意とする作家です。
その美しい世界を、ぜひ ご覧下さいませ。
「ろうけつ 手描き 鯉 半袖Tシャツ」
「ろうけつ 手描き 虎 半袖Tシャツ」
衣作品を描きあげて下さる他の作家につきましては、
またの機会に 語らせて頂きたいと思います。
待ちきれない方は、ぜひ店頭スタッフまで お尋ねくださいませ。
もの作りのハナシ5 -告白蛙 夏物語-2009.07.15
「告白蛙」という作品を ご存知ですか?
以前、“もの作りのハナシ4”で 取り上げさせて頂いた、
衣の長編ドラマ作品の1つです。
出会い、別れ、再会 と様々な 恋模様を
繰り広げる 二匹の蛙の物語。
その続編が登場しました!
気になる作品の詳細はこちらから。
告白蛙 夏物語半袖T【白】
今、衣では この二匹の関係の様なテーマ“巡りあい”を もとに、
『ちょっとした お遊び』の様な事を 衣 全店で展開中です。
衣の “もの作り”の一面に 触れて頂ければ…。と思います。