衣時間2016.06.29
それは、暦の上では、「梅雨」の真っただ中にありながら、降り疲れた雨神様が中休みしたような快晴の暑い一日でした。
遠く関東や九州の手前にお住まいの方々を含む沢山のお客様が、得体の知れない【衣ミステリーツアー】なるものに、こわごわ参加されました。もちろん、本来の目的は、お客様とスタッフとの久しぶりの交流ではありますが、観光名所にもガイドブックにもおおよそ載ってない秘密の体験をして頂くこと。そして大人になって出来にくくなった遊びを、いつもの理性をとっぱらって、やんちゃな自分を思い出す旅にお連れしたかった訳です。
緊張された顔を拝見できたのは、昼食まででした。机の上の鍋でゆっくり膜を張る湯葉を慎重にすくい上げないとならないのに、勝手に分けられたチームごとのゲームの勝敗に、ついお箸を持つ手に力が入り、崩れた湯葉に舌鼓ならぬ、舌打ちが聞こえてきた宴会のお席でした。バスの車内でも白熱のゲームが繰り広げられていた様子。
ほんの2時間前までは逢ったこともない方々が、テンション最高調で思わずハイタッチ。大きく差がついた得点をひっくり返すべく、大自然の中を駆け巡る妖怪退治。いつもの事ではありますが・・・・仕事の時には見せてくれない(笑)パワー全開のスタッフ妖怪たちに、お客様より感動してみたり、日頃の不満の少しは吹き飛んだのかと、安心したりもしました。
そんな合戦を見ながら、ぼんやり頭に浮かんできたのは、最初に拝観した広隆寺の弥勒菩薩の姿です。台座に座り片足を上げ、指先がやわらかく曲がり頬に触れる半跏思惟像【はんかしゆいぞう】のやわらかな微笑みの面立ち。千年以上その姿を守り続け手を合わしてきた人々の祈りの対象の仏像というよりも、向かい合った相手の心の中まで見透かして、口に出せず悩んでいることさえも平穏に浄化してくれるのではないか?と思うほどのやわらかい漂いの空気を全身から出してる仏像でもありました。
国と国、人と人が、ぎくしゃくしてきたことを感じられる最近の世の中で、こんな風に笑いながら戦う事が出来たなら、もう少し、穏やかで、やさしい関係が出来るのに・・・と遠い目線の向こうで大きな大人が水鉄砲で必死で戦う姿をみて思った時間でした。
子供の頃遠足やお祭りを待つのは長いのに、迎えたその日が行く時間の早い事。それを思い出すように、この日の京都は不思議な国のアリスの飼いウサギが時計をいじったかのような速さで西日が沈みました。
この度は「京都ミステリーバスツアー」にご参加いただき、誠にありがとうございました。衣時間に身をゆだねて頂き、京都の歴史を全身で満喫して頂けましたでしょうか・・・・?
衣主(ころもあるじ)