限定スカジャン「吉備津の釜」の物語 ~前編~2014.11.11
気まぐれ日記をご覧のみな様、こんにちは。
いよいよ近日登場します限定スカジャン「吉備津の釜」…、
歴代、女性の恨み・つらみ・妬みの物語を衣が描き出すシリーズ作。待望の新作です。
今回のお話「吉備津の釜」について、2話にわたり、ご紹介したいと思います。まずは前編から…。
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むかし播磨の国(兵庫県の南部地方)に井沢正太郎という道楽息子がいた。
裕福な家に生まれ、仕事もせず、酒ばかり飲んで女遊びが絶えず、わがまま放題。
両親は正太郎が嫁をもらえば、遊びクセも直るに違いないと考えていた。
するとタイミングのいいことに、年頃で気だての良い娘さんがいるという話があった。
相手の娘は磯良(いそら)と言い、代々、吉備津神社の神主の娘で美しく、
文芸の才もあり、村でも一番の孝行娘だと評判であった。
話はトントン拍子に進んで結納も交わし婚礼の儀式となった。
儀式は代々伝わる大釜に湯を煮立てて、その湯を笹の葉に浸して、
その湯を身に振りかけて前途を祝う「湯立て」という儀式。
その時に、大釜が沸騰して牛が吼えるような音が出たら吉、音が出なかったときは凶とされていた。
ところが、正太郎と磯良の縁組みの際には、どうしたことか、大釜はグツグツと沸騰しているはずなのに、
うんともすんとも鳴り響かず沈黙を守ったままなのであった。
神主だった磯良の父親は不安に感じたが、
むしろ原因は自分たちの日頃の行いのせいにあるのだろうと考えて、これを不吉なしるしとは考えなかった。
磯良が嫁入りしてからは、正太郎も見違えるように仕事に精を出し、仲のいい夫婦として暮らした。
しかし、その幸せも長くは続かなかった。正太郎の本来持っていた悪いクセがでてきたからである。
正太郎は女遊びを始め、袖(そで)という女となじみになって、家に帰らなくなった。
正太郎の父が見かねて一室にとじこめて、改心させようとした。
磯良も正太郎を信じ、懸命に世話をしたが、それをいい事に正太郎は磯良を騙し、
金を奪ってまた出て行ってしまった。その後、磯良は病気で寝込むようになり、日に日に衰えていった。
しばらくして、正太郎が帰ってきた。
そして、「自分に尽くしてくれて涙が出るほど嬉しい。とても後悔している。
あの袖という女を故郷に送り返し、縁を切ろうと思う。ただあの女は気の毒な生い立ちで、
田舎に帰る旅費と当面の生活費がないので工面してあげたいたい」と泣きついて言うのだ。
磯良はその言葉を信じ大事な服や持ち物をすべて売り、
実家に嘘をついてまで多額な金を用意したのであった。
ところが正太郎は、その金を手に袖と一緒に都に逃げてしまったのであった。
いよいよ磯良の純真な心は、凄まじいまでの復讐心に変わっていった。
今までじっと耐え忍んできたが、この上ないほど残酷に裏切られた事を憎みつづけ、
それが原因となり重い病にかかってしまい、正太郎を呪いながら死んでしまったのである。
そして正太郎の身には、次々と不可解な事が起き始めるのである…。
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後編はまた明日、お届けいたします。ぜひご覧ください。
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